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本滞在の期間は二週間位と限られており、次訪問国への航空券も持参しているので、日本国出国前にしかるべき処置を取り、X国に送還する様手配してほしいとも伝えられた。そして更に在日X国大使館にも連絡済とのことであった。
ISSJは早速X国大使館に連絡を取り、送られた資料を基に父子の宿泊施設にも連絡を取った。しかし、行く先を告げずに移転しており、行方不明となっていたが、大使館の協力で居所はつきとめられた。複数の在日外国人から、大使館に通報が度々寄せられていることもあって、大使館も何回となく父親に子どもの処遇につき話し合うため来館する様連絡を取ったが、「日本へは合法的に入国しており、適切なビザを持ち、日本国滞在に何ら問題はない」と大使館の働きかけにも応じないため、大使館も困っていた。しかし大使館は、「自国の市民の問題だが、ここは日本だから、日本国のしかるべき政府機関が関与すべきである」という理解を持っていた。関係者からの情報によると、父は3人の子を連れて2,3か所の盛場で東南アジアの国の人々を支援するための募金活動と称し、大道芸をし、子どもたちがお金を集めていて、子どもたちは着の身着のまま、シャワー、入浴もせず、悪臭を放っており、靴をはいていない、食事も満足に食べていない、登校もしていない状態である。彼らの福祉を考えると放置すべきでないことは明らかであるが、父親に全く問題意識がないことや、協力的態度でないことから、法的権限を持てない民間機関のISSJが出来る援助に限界がある事を知り、児童相談所に当ケースを照会し、子どもらの保護を依頼した。
児童相談所は、父子の日本での行動や問題を情報提供者や関係機関に確認後、ISSJの参加のもと、警察の協力も得ながら、父子が宿泊する施設に早朝、立ち入り調査を実施し、保護者に監護させる事が不適当と判断した。また、保護者の同意が得られなかったので、子どもたちは警察署に一時保護委託され、署長から被虐待児童の発見通告を受けた上、児童相談センターで一時保護されることになった。そして更に所内調査で保護者に監護させる事が引き続き不適当であると認められたので、児童の本国の児童福祉機関に移管する判断が児童相談所の所長及びISSJにより下された。
この決定が出てから約一週間後、子どもたちは児童相談所のソーシャルワーカーと保母と共に、日本を離れ母国に帰った。空港で警官らの厳重なガードのもと、当地の福祉関係者も加わり、子どもたちはグループ・ホームに直行し保護された。
1週間以内に裁判所により一時保護が妥当かどうか審理され、認承されると、里親委託が子どもたちのために計画されることになっている。

 

 

 

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